このコラムでは、マズローの提唱する自己実現への理解を深めたり、自己実現の道を進む勇気をくれる偉人や著名人たちの名言を、自己実現とどう紐づくのかの解説付きで13個厳選してご紹介させていただきます。
ちなみに、今回は「創造性」というテーマでの選出です。
また、このコラムでピックアップした名言を述べた人物たちが生み出した絵画や音楽などの作品を実際に見聞きすることで、真の創造性と自己実現を五感で体感できると思います。
では早速、自己実現とは何なのかを感じられる珠玉の名言たちをみてみましょう!
もくじ
1.パブロ・ピカソ
すべての子供は生まれながらにしてアーティストだ。
問題は、大人になってもアーティストでいられるかどうかだ。
ピカソは「20世紀最大の芸術家」とも称される言わずと知れた世界的に著名な画家ですね。
彼の残したこの名言は、マズローの考える自己実現における創造性が「子供らしさ」や「天真爛漫さ」などと深い関係があることを想起させてくれる言葉です。
私たちが大人になるにつれ創造性を発揮できなくなるという考えも、マズロー心理学と共通する視点と言えるでしょう。
なお、ピカソの晩年の作品はあまりウケが良くなかったようなのですが、本人はその事に対し「この歳になってやっと子供らしい絵が描けるようになった」と述べて悪評を気にしていなかったというエピソードにも、個人的にシビれます(笑)
また、ピカソが残した「私は対象を見えるようにではなく、私が見たままに描くのだ」という発言も、マズローの語る「無邪気な目」という自己実現の特徴と重なる発言と言えるでしょう。
あるいは、ピカソは作風がめまぐるしく変化した画家としても知られていますが、その辺りにも子供のような柔軟性や、一つのことに固執しない流動性、あるいは自己実現者の追求するB価値の一つである「躍動」という価値と結びつきそうなエピソードですね。
2.フィンセント・ファン・ゴッホ
もし「もう描けない」という心の声がきこえても、
かまわず描き続けなさい。
そうすればもう声は聞こえません。
ゴッホは言うまでもなく世界的に有名なオランダ出身の画家ですが、この名言は自分の可能性を信じられなくなったときの対処法と言えるような言葉であり、自己実現のキーワードである「没頭すること」とも繋がる内容ですね。
また、ゴッホは「ひまわり」などの作品は日本でも有名ですが、彼は数多くの自画像を描いたことでも知られており、
ゴッホが自画像を描く理由を聞かれたときに、「自分の肖像をうまく表現できたら、他の人々の肖像も描けると思うから」と答えたというエピソードは、「自分自身の本性を理解することはすべての人間に共通する人間性を理解することになる」とマズローが考えていたことを思い出させます。
なお、ゴッホの絵は現代でこそ信じられない金額がついていますが、実は生前に売れた絵は一枚であったという有名な逸話にも、マズローの語るように真の自己実現者は世間から正しい評価を受けづらく誤解されがちであるという特徴と似ているような気がしますね。
3.サルバドール・ダリ
完璧を恐れることはない、
完璧になんてなれっこないのだから。
ダリはスペイン出身の画家で、特徴的なひげの写真は一度目にすれば忘れないですよね(笑)
ちなみに、ダリは自身のひげに関する質問を受けた際に、ウソかホントか「水あめで固めている」と語ったりと、幾度となく謎めいた奇妙な発言を繰り返していたようです。
それ以外にも、突然象に乗って凱旋門を訪れたり、「リーゼントヘア」と称してフランスパンを頭にくくりつけて記者会見に登場するなど、彼の奇行に関する逸話も数多く残されています。
こういった奇想天外な言動は自己実現者らしいといえばらしいですが、ダリが夢で見たイメージをキャンバスに描くことで作品を創作していたというエピソードや、彼の有名な代表作である「記憶の固執」という作品からは、自己実現よりも至高体験や自己超越的な世界観を感じます。
いずれにしろ、ダリの「完璧になんてなれっこない」という発言は、マズローが完ぺきな自己実現者は存在しないと考えていたことと繋がるような気がしますね。
4.レオ・バーネット
人生に対するあらゆる好奇心こそ、
偉大なる創造的な人々の秘密である。
日本ではあまり有名ではありませんが、この人物はアメリカ人の広告エグゼクティブであり、マクドナルドやコカ・コーラなどといった世界的大企業のプロモーションにも携わっていた人物です。
たばこのマルボロを世界一のブランドにのし上げたり、コーンフロスティでおなじみのケロッグ社のトニータイガーというキャラクターを手掛けたのも彼ですね。
ちなみに、1999年にはタイム誌によって20世紀で最も影響力のある100人の1人に選ばれました。
子供のようなピュアな「好奇心」というはマズローが語る自己実現の超重要ポイントであり、好奇心をもたない人に真の創造性と自己実現は見いだせないことを思い出させてくれる名言と言えるでしょう。
5.ジャック・ロンドン
ひらめきがやってくるのを待ってはいられない。
棍棒を持って追いかける必要がある。
この人物は1900年代に活躍したアメリカ人作家で、1903年に出版された「野性の呼び声」によって一躍その名を広めました。
インスピレーションというものが、自己探求をし続ける過程のなかで生まれるものであり、自己実現における創造性にはゴールがないという点とも合致する名言だと思います。
なお、ジャック・ロンドンは約20年間の歳月のなかで53冊の著作と200以上の短編小説を発表しており、1904年には記者として日露戦争の取材のため来日しているという日本と関わったエピソードもあります。
ちなみに、作家として有名な村上春樹さんは1990年に「ジャック・ロンドンの入れ歯」というタイトルのエッセイを書いており、その内容は自己実現者の15の特徴の一つである「相手を無条件で尊重できる」の内容を感じられるエピソードです。
そのエピソードの詳細は、こちらの方のブログ記事に詳しく書いてありますので、よろしければご覧くださいね。
6.ジョージ・バーナード・ショー
空想とは創造の始まりである。
自分が望むものを空想し、
次にそれを望み、
そして最後にそれを創造する。
バーナード・ショーはアイルランドの文学者であり、脚本家、劇作家、評論家、政治家、教育家、ジャーナリストでもあります。
94歳で亡くなるまでに53本もの戯曲を残した彼は、その功績が称えられ1925年に「他に類を見ない風刺に満ち、理想性と人間性を描いた作品を送り出した」としてノーベル文学賞を受賞します。
「人間性」というキーワードがマズローが打ち立てた「人間性心理学」という心理学ジャンルの名前と一致することには、勝手ながらに二人の間に見出せる共通点に思えますね。
また上記の名言は、頭の中で「想像」したことを現実世界に「創造」する過程を述べた内容と言え、マズローが語る「第一次創造性と第二次創造性」の内容ともリンクしますね。
なお、1939年に第11回アカデミー賞の脚色賞を授与された『ピグマリオン』というハリウッド映画もバーナード・ショーの作品として有名です。
YouTubeでは、約1時間半の映画の全編を見ることができますよ(笑)
7.ドクター・スース
左を考え、右を考え、下や上も考えよう。
ただやろうとするだけで、どれほどの考えが見つかることか!
ドクター・スースはアメリカの絵本作家であり、画家、詩人、児童文学作家、漫画家としても活動していた人物です。
この発言は、マズローの語る「成長と安全の綱引き」の話における、安全に逃げずに成長する道へと進む勇気をくれる言葉と言えると思います。
なお、ドクター・スースという名前がピンと来なくても、「グリンチ」という作品名なら聞いたことがあるという方もいるのではないでしょうか。
また、ベストセラーの「帽子をかぶったネコ」はアニメ化もされていて、YouTubeでも900万回以上再生されています。
英語は分からなくても、その雰囲気や世界観だけでもチラッと見てみてください。
8.チャールシ・ミンガス
創造性とは人と違うということだけではない。
だれでも簡単に奇をてらうことはできる。
難しいのはバッハのようにシンプルであること。
できる限りシンプルにすることこそが創造性だ。
チャールシ・ミンガスは、1950~1960年代に活躍したアメリカのジャズ・ベーシスト・作曲家・ピアニストでもあり、人種差別反対活動でも有名です。
この名言の「シンプル」という部分は、自己実現者が目指す究極的価値である「B価値」の一つである「単純性」を思い出させますね。
また、ただ他人と違うだけであったり突拍子もない意外性しかないことは真の創造性ではないという点も、マズローの提唱する自己実現の概念と近しいものを感じます。
ちなみに、1957年に発表したCDのタイトルは「道化師」という名前で、彼がどういった意図でこの名前をつけたのかは分かりませんが、マズローの考える自己実現の対称的な概念である「疑似自己」というピエロを、個人的にはどうしても想起させられます(笑)
下記は、その「道化師」に収録されている代表作の「ハイチ人の戦闘の歌」という曲です。
9.レイ・ブラッドベリ
考えてはいけない。
考えることは創造性の敵である。
それは自意識であり、自意識はやっかいなものだ。
何かをしようとするのではない。ただシンプルにやるだけだ。
ブラッドベリはアメリカの小説家で・詩人であり、主な作品は「火星年代記」「華氏451度」「たんぽぽのお酒」などになります。
上記の名言は、マズローが語った「自己超越」「無私」「自己喪失」「B認識」といったキーワードに共通するような、いわゆる自我の消失の話と関連するものでしょう。
「自分」という存在感覚は大脳が発達した人間特有のものですが、ブラッドベリの発言は無我の概念とも紐づく自己実現の注意点を非常に端的に語ってくれている内容であり、マズローがよく使う「道教的」という言葉を理解することをフォローしてくれる名言とも言えます。
ちなみに、日本を代表するミュージシャン山下達郎さんは、子どもの頃からブラッドベリのことが大好きだったそうで、中学生時代には胸をキュンとさせならがら彼の小説を読んでいたのだとか。
楽曲制作においても随分インスパイアされているとおっしゃっており、特に一番影響を受けて作られた作品が「メリー・ゴー・ラウンド 」という曲のようですね。
10.エドウィン・ハーバート・ランド
創造性とは失敗を恐れないことだ。
この人物はアメリカでは著名な発明家・科学者で、写真用品を設計・製造・販売する世界的企業「ポラロイド社」の創業者でもあり、ポラロイドカメラ(インスタントカメラ)を発明したことで有名です。
彼の同僚によると、ランド博士は寝食を忘れ働くことを楽しんでおり、博士は普通の人とは違ったものの見方ができたためにインスタント写真の発明ができたのだろうとのことですが、これらエピソードはまさに自己実現らしい内容ですね。
上記の名言は、マズローが語る自己実現における「成長か安全か」という選択基準の内容と絡めて考えると、失敗を恐れるがゆえにとった行動は成長ではなく安全を選択したということになるかと思います。
そういった意味では、この名言は失敗を恐れていては成長へ向かう創造性は発揮できないということを端的に表現した言葉であり、もしランド博士が失敗を怖がり安全圏から出られない憶病な人物だったら、今日のスマホに内蔵されるカメラに代表されるような技術発展などもなかったのではないでしょうか。
11.アンリ・マティス
創造には勇気が必要だ。
この名言も、さきほど紹介したランド博士の名言と同じ「成長と安全」という対比を、勇気という切り口で端的に語ってくれている言葉ですね。
自己実現を成し遂げるためには勇気が必要のは言うまでもないことですが、マズローが語る自己実現へ至る八つの具体的手段の一つである「嫌われる勇気をもつ」という内容ともリンクする名言と言えるでしょう。
なお、アンリ・マティスは20世紀を代表とするフランスの画家で、自然をこよなく愛し「色彩の魔術師」と謳われた芸術家ですが、彼は冒頭で登場したゴッホにも強い影響を受けていたようです。
2004年に日本の国立西洋美術館などでも大規模なアンリ・マティス展が開催されており、2021年には国立新美術館においても展示会が予定されています。
その自然好きが高じて、テーブルの上に多様な草花が所狭しと並べられるなど、まるで植物園のような一風変わったアトリエを作ったり、大好きな鳥類を300羽も飼っていたという逸話がありますが、
自然美を愛しそこから創造性をインスパイアされるあたりは、自己実現者の目指す「真実・美・完全・全体性・富裕」などのB価値を追い求める姿と重ねられそうですね。
12.オースティン・クレオン
創造力というのは何を創るかだけじゃない。
何を捨てるかということでもあるんだ。
この人物は、テキサス州オースティン在住の作家・アーティスト・講演家であり、「絵を描く作家」とも呼ばれています。
新聞記事を黒塗りすることで作った詩集がアメリカでは有名で、彼の作品は「ウォール・ストリート・ジャーナル」をはじめ、各種媒体で取り上げられていますね。
現在も「デジタル時代の創造力」をテーマに、Google、TEDx、ピクサーなどで講演をするなど第一線で活躍するアーティストです。
上記の名言は、マズローの自己実現における重要ポイントである、「受容性」への理解を深めてくれる内容と言え「受け入れる」という事柄がもつ「手放すこと」「解放すること」というエッセンスを感じさせてくれる言葉ですね。
なお、彼が書いたいくつかの本は日本語訳され、Amazonなどでも手に入りますよ。
13.マヤ・アンジェロウ
あなたが、あなた自身に与えることの出来る
最大の贈り物の一つは、許すことです。
全ての人を許してあげましょう。
最後に紹介するマヤ・アンジェロウは、アメリカ合衆国の活動家・詩人・歌手・女優であり、キング牧師とともに公民権運動にも参加した人物です。
生涯にわたる数々の偉大な功績が称えられ、2011年にはオバマ元大統領から文民最高位の「大統領自由勲章」を授けられたり、また、彼女が亡くなった際にはビル・クリントン元大統領が「米国は国宝を失った」と追悼の意を述べたりしました。
2018年の4月4日には、彼女の生誕90年を記念したGoogle Doodleもデザインされています。
そんな彼女は多数の名言を残しており、たとえば「愛は、解放するもの」という名言は、先ほどのオースティン・クレオンの「捨てる」という名の受容性の話にも繋がりますし、
あるいは「多様性の中にこそ美しさと強さがある」という彼女の別の名言には、自己実現者が目指すB価値のなかの「富裕」という名のバリエーションの豊かさを感じることができると思います。
そのなかでも個人的に最も胸が熱くなる名言が冒頭の言葉であり、「自分を許す」という真の自己肯定こそが、私たちが自分自身に送ることができる最大のギフトであると表現したことは、黒人差別と対峙し続けてきたマヤ・アンジェロウが述べることで、より深い意味をもつ言葉になりますね。
自分を本当の意味で許し受け入れることで、始めて他人に対して本質的な受容することができることを伝えてくれているのでしょう。
なお、彼女の自伝はAmazonでも購入することができます。
さて、以上が私たちの自己実現を力強くサポートしてくれるであろう、13の名言でした。
なお、ここで紹介した名言はあくまで自己実現をサポートしてくれそうだというだけで、これらの名言を残してくれた人々がマズローの考える自己実現者であるかどうかはまた別の話なので、それだけはご承知おき下さいね。
いずれにしろ、もし今後、自己実現を目指す過程で心がくじけそうになったら、これらの言葉を思い出すことできっと勇気をもらえると思いますよ!
また、現時点ではあまりピンとこない言葉でも、ときが経ち自分の内側が変わったタイミングで振り返ってみると、また新しい発見や気づきがもたらされると思うので、これらの名言たちを心の片隅にしまっておくと自分の人生をより輝かせてくれるはずです。