欲求階層

マズローの社会的欲求とは?具体例・所属と愛の欲求との違いなども解説

社会的欲求
自己紹介

 

マズローの欲求階層において、生理的欲求・安全の欲求についで下から三番目に位置する欲求である「社会的欲求」。

一般的な説明では、『社会的欲求とは、社会性や他人とのつながりを求める欲求のことであり、これを別名で「所属と愛の欲求」と呼ぶこともある』という解説が多いですが、これは正解でもあり間違いでもあります

これは果たしてどういうことなのでしょうか?

今回は、「社会的欲求」と「所属と愛の欲求」の違いとは何なのかという大前提の話からスタートし、欲求の具体例などにも触れながら、マズローの主張に忠実に沿った正しい解説をしていきたいと思います。

 

1.社会的欲求とは?

社会的欲求

 

ここではまず、結論から言いたいと思います。

マズロー自身が語っている欲求論の原文をしっかり読み解けば、「社会的欲求」と「所属と愛の欲求」はまったくの別物です。

というか、もっと正確に言うならば、マズローは自身が書いた書籍のなかで実は一度たりとも「社会的欲求」や「社会的な欲求」という単語は使っていません

 

つまり、本当にマズローの主張を忠実に汲み取るのであれば、欲求階層における三つ目の欲求階層の名前は「所属と愛の欲求」が正しく、「社会的欲求」という名前でそれを呼ぶのは誤りです

したがって、「社会的欲求とは何か?」という質問自体がズレた内容であり、正しくは「所属と愛の欲求とは何か?」というのが正しいということになりますね。

 

それにも関わらず、実際にネットで検索して上位表示されるページで説明されているマズローの欲求階層についての解説は、マズロー書籍を1ページも読んだことのない書き手が、どこかで聞きかじった又聞きの欲求階層論をテキトーにまとめて説明しているだけなので、安易に「社会的欲求」という名前を使用し実際その内容は非常にずさんで間違いだらけです。

要するに、書き手自身が自分の書いている内容が間違っているということにすら気付いておらず、彼らが浅はかな知識と動機から情報発信をすることで、世の中に誤情報を広げてしまっているんですよね。

少々角が立つ言い方をしてしまいましたが、ここは大切なポイントだと個人的には考えているので、耳障りの悪い表現を熱っぽく語ってしまったことはお許しいただければと思います。

 

それに、ちょっと考えれば、「社会的欲求」と「所属と愛の欲求」って字面の雰囲気は似ている気はするものの、言葉の意味はどう考えても全然違いますよね。

「社会的」と「所属・愛」って、「豚肉」と「牛肉」くらいに違うと個人的には思います(分かりにくい例えで申し訳ないですが…笑)

要するに、「どっちも同じ肉だろ!」って発言力のある人に押し切られると「うん、まあ、ここはそういうことにしとこう」となってしまいがちなのは分かるものの、実際は豚肉と牛肉って美味しさも用途も特徴も全然違うよねってことです。

もっとも、「社会的欲求」と「所属と愛の欲求」の呼び方の違いなんて、普通の人々からしたら大した差なんてないと思うのですが、僕にとってはポークカレーとビーフカレーくらい違うもので、もっと言えば豚の生姜焼きを牛肉で作るくらいの暴挙なんです(笑)

生姜焼きは豚ロースで作るから美味しいのであって、牛肉で作っても値段が高いだけで全然美味しくないことは皆さんも賛同していただけますよね。

実際、定食屋で豚の生姜焼き定食を頼んだのに、生姜焼きの味付けが全然似合っていない激マズの「牛の生姜焼き」が出てきたら多くの方が「これは流石にないわ~」ってなると思います(笑)

そのくらい、「社会的欲求」と「所属と愛の欲求」の混同は、僕にとってはスルーできない問題なんです。

 

さて、ということでこの後は、日本語されている六冊のマズロー書籍をすべて読んだ僕の立場からみた、「社会的欲求」と「所属と愛の欲求」の解説(生姜焼きはやっぱり豚でしょ!という解説)をさせていただければと思います。

なお、マズロー心理学以外のジャンルにおける心理学用語には「社会的欲求」という単語はあるので、ここではあくまでそれらとは切り離した解説になることもご承知おきいただければと思います。

 

2.マズローは社会的欲求という単語は使っていない?

社会的欲求

 

さて、「所属と愛の欲求」の内容にスムーズに入っていくために、まずは目の上のタンコブになっている「社会的欲求」というネーミング問題をささっと片付けてしまいましょう

 

繰り返しになりますが、マズロー自身はその書籍のなかで「社会的欲求」あるいは「社会的な欲求」という単語は一回も使っていません。

もちろん、日本語訳されていない他の本でこの単語を使用している可能性もゼロではありませんが、恐らくはそれもないと思われます。

なぜなら、マズローが欲求階層について最も詳しく述べている『人間性の心理学』という書籍においては明確に「所属と愛の欲求」という名で基本的欲求の三つ目の欲求を呼んでいるからです。

ちなみに、英語の原文では「the belongingness and love needs」とマズローは表現していますね。

 

また、マズローが欲求階層における基本的欲求の詳細について語っているのはこの『人間性の心理学』だけであり、その事も含め考えると、マズロー自身はこの欲求を「所属と愛の欲求」と名付けていたと結論付けるのが正しいでしょう。

 

なお、マズロー研究の第一人者とも言え、最も多くのマズロー書籍を翻訳されている心理学者である上田吉一さんも、ご自身の著書『人間の完成 マズロー心理学研究』の中では「所属と愛の欲求」という名前でこの三つ目の欲求の説明をしてくださっています。

この事も踏まえると、やはり「社会的欲求」という呼び名ではなく、「所属と愛の欲求」という名前がこの欲求を語る上では適していると思います。

 

3.社会的欲求の名付け親は?

社会的欲求

 

ではいったい、誰が最初に「所属と愛の欲求」を「社会的欲求」と呼び始めたのでしょうか?

 

結論から言えば、それは不明です(笑)

もちろん、僕自身が調べきれていないことも大いにありますし、そういった意味ではまだまだ探究の余地はあるのですが、現時点では突き止められていないというのが正直なところです。

もっとも、検証段階ではあるものの二つの仮説はあるので、せっかくなのでそれらについてチラッとだけ触れておきたいと思います。

 

その一つ目は、マズローの研究をもとに生まれた「人間性心理学(ヒューマニスティック心理学)」というジャンルから派生した心理学に「トランスパーソナル心理学」というものがあるのですが、その変遷のなかで「所属と愛の欲求」が「社会的欲求」という解釈に変わったのではないかということです。

もっとも、僕は「トランスパーソナル心理学」の専門家ではありませんのでこの事に関する詳細な根拠は提示できないですし、この仮説が間違いである可能性はかなり高いです。

要は、これは苦肉の策で絞りだした仮説にすぎないということです(笑)

それに、そもそも論ですが、「人間性心理学」も「トランスパーソナル心理学」もその発祥はアメリカなので、英語圏で論じられた内容を日本語訳する際にはどうしても無理が出てきたり誤訳が生じたりするのは致しかたないことですしね。

そういった意味では、この一つ目の仮説はただのオマケ話程度に聞き流していただければと思います。

 

続いての二つ目の仮説は、日本の名だたる心理学会の教授や学者たちによって編集されている『心理学辞典』(有斐閣)という辞書による影響です。

『心理学辞典』の中では、「欲求」の項目の説明として『欲求は、一次的欲求(生理的欲求)と二次的欲求(社会的欲求)に分けられる。』と書かれているんです。

このことが、マズローの欲求階層における「所属と愛の欲求」が日本では「社会的欲求」というネーミングにすり替わってしまった原因ではないかというのが二つ目の仮説です。

もちろん、この『心理学辞典』はアカデミックな書物で一般人はほぼ手にすることのない辞典です。

しかし、心理学の研究に携わる専門家がまとめあげ、他の多くの専門家たちも使う辞典にこのような記述があることの社会的な影響力は小さくないのではないでしょうか。

もっとも、これも一般ピーポーである僕がなんとか絞りだして考えた仮説なので、まったく見当違いという確率が高いです(笑)

 

したがって、ここでご紹介した二つの仮説はあくまで検証が不十分な可能性としての話であるということは、ご承知いただければと思います。

 

ちなみに、最後に補足としての余談を少しお話しさせてもらうと、Wikipediaでは「自己実現理論」という項目の中で基本的欲求や欲求階層説が紹介されているのですが、その説明においては「社会的欲求と愛の欲求 (Social needs / Love and belonging)」という形で記載されています。

ただ、Wikipediaには該当記事の情報源を明確にするために「出典」という欄に参考文献などを記載するのが基本ルールなのですが、「自己実現理論」の記事の出典には四冊の書籍が書いてあるものの、そのどれもがマズロー自身が書いた書籍ではありません

 

僕自身はウィキの記事を書いたことがないので詳しいことは分かりませんし、誰がこの記事を書いているのかも不明ですが、いずれにしろこれは結構問題なのではと思います。

実際、マズロー心理学に関するウィキに書かれている情報は、僕からすると間違いだらけ&ヌケモレだらけ(誤情報満載&情報不十分)です。

しかし、ウィキに「社会的欲求」と書かれれば、僕のようなイチ一般人では太刀打ちできないのは言うまでもないこと(笑)

 

もっとも、個人的には誰が最初に「社会的欲求」という名前を付けたのかの謎や、もしそれが本当にマズロー自身の言葉でないなら「所属と愛の欲求」というネーミングをもっと世に広めたいなとも思ってもいるのですが、むろんそんなことに興味のある人は世間一般には皆無ですよね。

 

それに、もしかしたらただ単に何処かの誰かが「所属と愛の欲求」の説明を聞いて、『これって社会的な欲求ってことじゃん』と解釈し、そのほうが耳障りも文字から受けるイメージも受け入れやすいので、それがいつの間にか広まっただけなのかもしれません。

 

なので、ここまでの話はあくまで豆知識として覚えておいてもらえればいいと思いますし、「所属と愛の欲求」の名前に関する一連の話は僕のグチに過ぎないというのが正直なところです(笑)

そういった意味でも、この欲求のネーミングに関する情報や知識をお持ちの方は、是非このサイトのコンタクトフォームから僕にその詳細を教えていただけるとメチャクチャ嬉しいです。

 

4.社会的欲求の具体例

社会的欲求

 

さて、ということで、ここまでの内容を一旦整理すると以下のようにまとめられますね。

 

●日本語訳されているマズローの書いた本では一度も「社会的欲求」という単語は使われていない

●マズロー自身は欲求階層における三つ目の欲求を「所属と愛の欲求(the belongingness and love needs)」と表現している

●「所属と愛の欲求」が「社会的欲求」という名前に代替され日本でそれが広まった理由は不明だが、マズローの主張を尊重するのであれば「所属と愛の欲求」という呼び名でこの欲求を扱うべきである

 

さて、以上のことを踏まえて、改めて「所属と愛の欲求」についてまとめたコラムを別個でご用意させていただきましたので、下記リンクからその詳細をご覧いただければと思います。

所属と愛の欲求
所属と愛の欲求とは?各々の欲求の意味と具体例、社会的欲求との違いも解説 マズロー心理学の欲求階層において、「生理的欲求」と「安全の欲求」に次ぐ三番目の欲求として有名な「所属と愛の欲求」。 ...
水色マズロー
水色マズロー
関連記事