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二十世紀最大の物理学者とも呼ばれ、特殊相対性理論と一般相対性理論でも有名なアインシュタイン。
このコラムでは、アインシュタインのとある名言から紐解く、「問題解決の極意」とも言うべき、目の前の問題や課題を適切な解決に導くコツの話をしてみましょう。
仕事や人間関係において
「いつも同じ問題につまづいている」
「どうしても根本的に解決できない問題がある」
「表面的なその場しのぎの対処ではなく本質的で抜本的な処置がしたい」
「解決しても時が経つとまた同じ問題が生じるということが続いてしまう」
こんな事柄と向き合うヒントにしていただければと思います。
問題解決において大切な「質問力」とは?
さて、それでは最初に、このコラムのメインテーマになる、アインシュタインのとある名言を引用しましょう。
![アインシュタイン](https://maslow-quest.com/wp-content/uploads/2021/03/column0323_02-241x300.jpg)
アインシュタインは、ある時こんな質問をされました。
『もし、巨大な惑星が一時間以内に地球に衝突し地球上のすべてを破壊すると言われたら、
あなたならどうしますか?』
その質問に対して、アインシュタインはこう答えます。
「55分は問題を定義することについて考えることに費やす。
そして、残りの5分でそれを解決しようと試みるだろう。」
ちなみに、原文だとこんな感じの英語です。
『I would spend 55 minutes thinking about formulating the problem and give five minutes trying to solve it.』
(※ちなみに、この発言にまつわる英語の原文は諸説あり、あるいはそもそもこれはアインシュタインの言った言葉ではないという説もあるようですが、ここではそれは重要なことではないのでスルーさせていただきますね。)
一般的には、このアインシュタインの名言は、質問力の大切さを伝えていると言われています。
要するに、普通なら与えられた60分間のうち問題解決の手段の実行にほとんどの時間を割こうとしますが、アインシュタインはそうではなく、まずはその行動を導き出す前提部分を明確にするために時間を費やすということですね。
適切な質問ができなければ、その回答が問題解決を導くものではなくなってしまうことは言わずもがなです。
このことについての実例を一つ話しましょう。
僕は数年前、仕事の関係で月に何度も格安航空会社の飛行機に乗って北海道に出張に行っていました。
そんな生活が1年以上続いていたので、当然ながら結構マイルがたまります。
僕はずっとこのマイルを貯め続けていたのですが、そのことを忘れたままその仕事をやめて1年くらいしてからマイルの有効期限のことを思い出し、当時頻繁に利用していたスカイマーク(格安航空会社)のマイルがいくらたまっているのか確認しようとしたんです。
しかし、スカイマークの会員サイトにログインしようとしても、航空会社の公式サイト内でいくら探しても全くログイン画面が見つかりませんでした。
過去の予約メールにログインURLがないかと探したり、yahoo知恵袋で探したりしてもいっこうに見つかりません…。
他の方法で貯まっているマイルが確認できないかネットでも調べましたが、有力な情報は出てきませんでした。
しょうがないのでお問い合わせセンターに電話して聞いてみようと思った時、「あること」に気づいたのです。
それは、僕が使っていた航空会社は、「スカイマーク」ではななく「AIRDO」だったんです!(笑)
これに気づいたときは自分でも笑ってしまいましたが、このような勘違いって誰しも一度は経験したことがあるのではないでしょうか。
要するに、僕は問いかけが間違えていたがゆえに、正しい答えにたどり着けなかったのです。
僕がすべき問いかけは、「AIRDOのマイルを確認するにはどうしたらいいか?」であり、「スカイマークのマイルを確認するにはどうしたらいいか?」ではなかったんですね。
それにも関わらず、僕はずっと後者の問いかけを解決するために、時間を費やしていたのです。
ちなみに、スカイマークはマイル制度がないので、そのログイン画面がないのは当たり前だったんですよね(笑)
そして言わずもがな、これは時間の無駄遣いでありタイムロスです。
僕のこの愚行を冒頭のアインシュタインに対する問いかけで例えれば、僕は最初の1分で「スカイマークのマイルを調べるにはどうしたらいいか?」という質問を立て、残りの59分間でずっとその問題解決のための行動(ログイン画面を探す)をし続けていたということです。
これは些細な事例なので笑い話になりますが、もし隕石で地球消滅レベルの問題解決の話だったら、笑っていられませんよね。
仕事上のタスク処理でも、このような見当違いをしていれば成果には結びつきません。
たとえば、お店の集客における宣伝方法に問題のある飲食店のオーナーが、そのことを自覚せずに「料理の味に問題があるからお客が集まらないんだ!もっと美味い料理を提供するにはどうしたらいいんだ?」という問いを立て問題解決を図っても、大きな変化は望めないのと同じです。
このオーナーが力を入れるべきはお店の認知度を上げるアピール力なのにも関わらず、それとはズレた発想で対策しようとしても顧客数が増えないのはイメージできますよね。
あるいは、たとえば恋人との関係性が良好ではない女性がいたとして、彼氏ともっと信頼し合える関係性になりたいと思っている場合に、その女性が彼氏がなかなか自分の相手をしてくれない原因をしっかりと見極め自分の中で正しい問いを立てられなけば、どんな手段を講じても彼氏は振り向いてくれないでしょう。
「彼が愛想をつかしているのは私の愛情が足りないからだ!だから問題なのは、いまはそれぞれで別の家に暮らしていることだから、その対処として同棲を提案してみよう!」と思って行動しても、もし彼がそれとは逆に彼女の過干渉に嫌気がさしていることで距離をとっているのだとすれば、そのようなアプローチはむしろ逆効果になりますよね。
この女性は、問題解決のためのそもそもの問いかけが間違っているから、実際の解決にはいつまでたってもたどり着けないのです。
つまりこのように、問題を解決するための正しい質問を投げかけることができなければ正しい問題解決には至らないということをアインシュタインは言いたかったというのが、大方の説明になるでしょう。
しかし、本コラムでは、この一般的な解釈に少し新しい味付けをしてもっと奥深い部分まで掘り下げてみたいと思います。
そのキーワードは、「認識力」です。
先ほどの英語の原文で言えば、『formulating』の部分によりフォーカスするということですね。
アインシュタインの名言をマズロー的に紐解く「認識力」とは?
それではまず、結論から言いましょう。
あらゆる問題解決のキモとなるポイントは、冒頭で触れた「質問力」と、それプラス「認識力」だということです。
言い換えれば、問題を解決するために「質問力」と同じくらい大事なのが、目の前の現実を正しく把握する「認識力」ということになります。
なお、「認識力」とは「物事の認知力」すなわち「現実を正確に捉える力」のことだと思っていただければと大丈夫です。
そして、このことを、アインシュタインを理想的な自己実現者像に挙げたマズロー流のスパイスを加え公式化してみると、「質問力+認識力=問題解決能力」ということになります。
これだけ聞くと「?」ですかね…(笑)
ということで、これをもう少し分かりやすく説明するために、「質問力」=「問いかけ力」すなわち「適切な問いを立てる力」とし、「認識力」=「物事の認知力」すなわち「現実を正確に捉える力」として、話を進めてみましょう。
この意味合いで先ほどの「質問力+認識力=問題解決能力」を言い換えてみると、
要するに、目に前に何か問題があってそれを解決したいときに大切なのは、
「その解決策を導き出せる適切な問い」と「その問いを立てるための現状の正確な把握」ということです。
言い換えれば、問題への対処方法を導き出す問いをしっかり立てるためには、まず問題となっている現実そのものをちゃんと捉えないといけないよね、ということです。
つまり、順番としては、「正しい認識をもつ」→「正しい現状把握をする」→「その現状を解決する正しい問いを立てる」という流れになるということになります。
この説明だとまだ抽象度が高いので、もう少し具体的な事例で考えてみましょう。
旦那さんのその不倫、本当に不倫ですか?
たとえば、あるところに、現状の夫婦関係をより良いものにしたいと願っている女性がいるとしましょう。
この女性は、旦那さんともっと仲良く信頼し合える関係性になるための解決策を模索しているのですが、とあるきっかけから旦那さんが不倫していないのに不倫していると誤解してしまったとします。
まあ、これは旦那さんからすればただの冤罪なのですが、そう信じ込んでいる奥さんからしたらまぎれもない事実になっています(笑)
そして、この女性は、ことあるごとに旦那さんの不倫を確信しようとし、起こる出来事をなんでもかんでも不倫に結びつけて物事を捉えてしまいます。
旦那さんの帰宅が遅ければ不倫相手と仕事終わりに会っていたからだと思い、旦那が土日に要件を隠して外出すれば不倫相手と密会していると疑わず、旦那がトイレでコソコソ誰かと電話していれば相手の女性と話しているように目に写ります。
しかし、実は、旦那さんのこれらの行動はぜんぶ、近々控えている奥さんの誕生日を盛大にお祝いするサプライズのための準備だったんです。
旦那さんの帰宅が毎日遅かったのは、奥さんの好きな曲をピアノで演奏してあげたいとの思いでこっそり練習していたからであり、毎週末どこかに外出していたのは秘密の手作りのプレゼントブーケを作りに行っていたからであり、トイレでのコソコソ話は友人とサプライズパーティーの打合せをしていたからだったのです。
しかし、このことを知らずに、正しい現実とは違う現実を見ていた奥さんは、当然ながら「問いかけ」も的外れなものになります。
「不倫相手は誰なのか?」
「不倫相手と何をしているのか?」
「不倫の原因は何なのか?自分の何がいけなかったのか?」
「旦那の不倫の証拠を掴むためには、尾行すべきか探偵を雇うべきか?」
「旦那の不倫を証明した暁には、どう問い詰めるのがベストか?」
「そもそも子どものことを考えれば、不倫を明らかしないほうがいいのではないか?」
こんな感じで、トンチンカンな問いかけをしてしまうのです(笑)
繰り返しますが、そもそも旦那さんは不倫なんてしていないのにですよ。
そして、この問いかけの末に導き出された回答としての行動も、その内容がなんであれ、もちろんトンチンカンなものになるのは言わずもがなですよね。
当然どんな行動をしたとしても、問題解決には至りませんし、なんならより問題を複雑にする可能性も高いとすら言えるでしょう。
つまり、「不倫をしている」という歪んだ現実を捉えることによってアンポンタンな問いを立ててしまい、その問題提起にもとづいて何の解決にもならないお門違いの行動をするハメになっているのです。
当然、夫婦関係の改善という問題解決なんてもってのほかになってしまいます。
そして、だからこそ大事なのが、「正しい現実を捉えること」なんです。
なぜなら、それがすべてのスタート地点だからですね。
その上で、正しい「問いかけ」をする。
そうすれば、自ずとベストな「解答」は導き出せ、現実的で適切な処置ができ、問題解決に至るのです。
逆に言えば、現実を正しく認識できなければ、さきほどの奥さんのように誤った問いかけをすることになってしまいます。
正しい現実を捉えることは意外とできていない?
先ほどの奥さんのおかげで、正しい現実を認識することが大切だということは分かっていただけたと思います。
しかし、電子書籍『マズローが教えてくれる健康な心のつくりかた』でも書きましたが、残念ながら多くの人々が、正しい現実を捉えることができていないのも、また事実なんですよね。
悲しいかな、僕たちは往々にして、自分の勝手な思い込みや固定観念、あるいは暗黙知として受け入れられていて疑われることのない社会通念や一般常識などによって、歪んだ現実をみているんです。
「こうに決まっている!」という思考や「こうであってほしい!」という願望が、本人の目に見える世界に投影されることで、ありのままの世界を認知することができません。
実際、嫌いな人の嫌いな部分だけがやたらと目につくことは、誰しも経験のあることなのではないでしょうか。
または、「コイツは仕事できないヤツ」と相手を認定すると、その能力の低さを証明し続ける行動ばかりに目がいくようになります(笑)
あるいは、「性格が悪いダメ人間」「自分とは合わないタイプ」と思った人の良いところを見つけようとする人は、基本的にはいないですねよね(笑)
いずれにしろ、このようなかたちで歪んだ認知でものを見ていることは、人間関係に限らず意外と多いものです。
「思い込み」とは、それが思い込みだと気づかないから「思い込み」なんですよね。
なお、正しい認識をもち正しい現実を捉えるヒントになる書籍をこのコラムの最後にご紹介するにで、ご興味ある方はそちらを手に取っていただければと思います。
正しい認識から導かれる適切な問いが問題解決に繋がる
さて、最後にここまので話をまとめると、要するに、仕事上の問題にしろプライベートにおける問題にしろ、現実を正しく認識できないと、正しい問いかけができず、結果的に問題の正しい解決にも結びつかないということです。
つまり、問題解決の流れとしては、「①正しい認識 → ②適切な問いかけ → ③適切な解答 → ④適切な行動 → ⑤問題解決」ということですね。
しかし、①がそもそもズレてたら、②も③も④も全然見当違いなものになり、⑤に辿り着かないのは当然。
むしろ、スタート地点の①が土台としてちゃんと据えられていなければ、その上に積み上げられる問いや答えや行動はさらに問題を複雑にするということも、イメージできると思います。
これを先程の不倫を誤解していた奥さんに当てはめると「①旦那さんは不倫しているという誤解→②不倫の証拠を掴むには?という不適切な問いかけ→③探偵事務所に依頼した方がよいという見当違いの解答→④良い探偵を調べだすという誤った解決策としての行動→⑤そもそもの問題解決にはなっていない」といった感じでしょうか。
本当はもっと素敵な夫婦関係になることを望んでいただけなのに、スタート地点の現実の認知が間違ってしまったがゆえに、夫婦関係の改善という問題解決にも至らないのです。
言い換えれば、本質からズレた現実の捉え方は、ズレズレの問いかけを生み、ズレズレの解答に紐づいて、結果的にズレまくった更にズレズレズレの現実をもたらしたのですね。
こう言った意味で、「問題解決能力=質問力+認識力」ということが言えるのです。
もちろん、先ほどの奥さんは極端な事例かもしれませんが、あの奥さんのような誤解と偏見に満ちた誤った現実認識を知らず知らずにしてしまっているケースは少なくないように思います。
もっとも、アインシュタインが冒頭の発言に込めた真意はアインシュタインにしか分かりませんし、もしかしたら全然違う意図を込めてあのような発言をしたのかもしれません。
しかし、あのアインシュタインの名言を、「マズローの自己実現的」に解釈すると、ここまで述べさせたいただいたような視点で考えることができると思います。
それに、現実を正しく捉えるこの話は、マズローが自己実現していると認めた人々がみな現実世界を正しく認識できているがゆえに問題解決能力が高いこととも合致する内容なんですよね。
またこの話は、マズローが自己実現した人たちに共通する15個の特徴として挙げたうちの一つである「無邪気な目」の内容ともこの話はリンクするものがあります。
ここでは結論だけ言うと、この「無邪気な目」をもつことが「正しい現実を認識する」ことと繋がっているんです。
なお、マズローが最も自己実現レベルが高い人物の一人にあげた元アメリカ大統領のエイブラハム・リンカーンも、アインシュタインと同様の発言を残しているようですね。
『もし木を切る時間を8時間与えられたら、私はそのうちの6時間を斧を研ぐのに使うだろう。(If I had eight hours to chop down a tree, I would spend six of them sharpening the axe.)』 by リンカーン
研磨されていない斧で問題となっている大木を切ろうとしてもラチがあきません。
同様に、磨かれていないサビた認知では、問題をスパッと断ち切ることもできないでしょう。
物事を正しく認知する研ぎ澄まされた認識力で現実を把握するからこそ、適切で本質的な問題解決が成し得るのです。
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